【坂口拓・山口雄大】映画を通して語る”個が持つ「才能」とは?今「やれること」とは?映画塾 最終章!

今回の「山口雄大映画塾 feat.坂口拓」であるが、そもそもの起点は去年の事。ある日、拓さんから電話が来た。

坂口「Netflixに来た『ディザスター・アーティスト』観た!?めちゃくちゃ面白いから直ぐ観てみてよ!!」

『ディザスター・アーティスト』は2017年製作のアメリカ映画。

実存する、“史上最大の駄作”としてカルト的人気を集めた2003年製作の『ザ・ルーム』という映画の製作過程を、ジェームス・フランコ(『127時間』やサム・ライミ監督「スパイダーマン』三部作で、主人公の親友演じてましたよね!)が監督・主演・プロデューサーとして映画化。日本では、元ネタである『ザ・ルーム』自体が未公開だった為だろう、『ディザスター・アーティスト』も劇場公開にはならずに、Netflixスルーとなっていた。

ところが、この『ディザスター・アーティスト』本国アメリカでは、ゴールデングローブ賞作品賞にもノミネート!ジェームズ・フランコなんてミュージカル・コメディ部門で主演男優賞獲っちゃったんだから!!!

その全米での快進撃の情報を知っていた山口雄大監督が、Netflixで『ディザスター・アーティスト』を発見・鑑賞。余りの面白さにすぐさま拓さんに連絡。観た拓さんから、私に連絡が来た……と、いう訳です(長いw)。

雄大「俺は去年(2019)ベストが『ディザスター・アーティスト』だね!」

坂口「俺も去年のベスト5に入る!」

と、いう訳で先ずNetflix又は、各社配信サービス、TSUTAYA等でレンタルもされてますので『ディザスター・アーティスト』をご覧頂きたい!まぁ……観ずとも、この記事を読んでしまうと気になって仕方なくなると思うので(笑)、それからでも可!!

実は、先ほどその元ネタである映画『ザ・ルーム』が“未公開だった”と書いたのには訳があって、つい先日、ヒューマントラスト渋谷&シネ・リーブル梅田で開催されていた映画イベント「未体験ゾーンの映画たち2020」のクロージング作品として、遂に日本初公開を迎えたのです!!!

今回、急遽決まった「山口雄大映画塾feat.坂口拓」だった為、太田P不在で、“史上最大の駄作”,B級どころか、“Z級映画”とまで呼ばれる『ザ・ルーム』を鑑賞。その余りの愛すべき欠陥の多さに私も久し振りに劇場で声を出して大爆笑してしまった(笑)。

……というわけで、今回の映画塾は、

『ディザスター・アーティスト』と『ザ・ルーム』を議題に、開校~!!!!!

雄大「俺、『ディザスター・アーティスト』は映画秘宝なんかにも書かれていたから知ってたのよ。そもそも、ジェームズ・フランコが監督・主演してるコメディ作品って何本もあるにも関わらず、あまり日本に入って来ないんだよね~。彼が主演・製作の『THE INTERVIEW』も日本で公開さえれなかったじゃん(※1)。

だから日本ではイケメン俳優って捉えられ方してると思うんだけど、実は違うんだよね。アメリカでは“少々変わった映画作る人”って思われてるらしい(笑)。そこで更に、元ネタの『ザ・ルーム』も観た事ないから知らないけど、その製作過程を映画化した『ディザスター・アーティスト』っていう、ジェームズ・フランコが作った変な映画が(笑)評価受けてるって聞いてたんだけど、一旦忘れてて(苦笑)……そしたらある日、少々ダサいサムネでさ(苦笑)Netflixに来てたんだよ。で、観始めたら……めちゃめちゃ面白くて!!」

屋敷「それで確か雄大さんから拓さんに連絡行ってぇ……t」

坂口「アレ?俺その時既に知ってたんじゃなかった?」

雄大「いやいや、俺が観て直ぐ言ったんじゃん(笑)!これ、めっちゃ面白いよ!!って」

坂口「そうだった、そうだった(笑)。雄大さんも俺もそうだけど、自主映画上がりの人間だから、映画が作られる過程ってシチュエーションに、既に共感出来るものはあったよね!」

雄大「それはそうだね!エド・ウッド(※2)なんかはさ、才能は無くても映画愛はあるじゃん。でも、この人(『ザ・ルーム』の主演・脚本・製作・脚本のトミー・ウィゾー。『ディザスター・アーティスト』ではジェームズ・フランコが彼を演じている)映画愛ないじゃん(笑)!」

坂口「そうそう(笑)!それで更に違いを言うと、エド・ウッドは映画監督だけど、アイツ(トミー・ウィゾー)自分が役者であることにナルシスと的に酔っていて、それで(自分主演の映画を)撮りたい人なんだよね。で、自分の芝居を撮りたいが為に製作したのに……そもそも彼がボンクラじゃん(笑)」

屋敷「(爆笑)!」

雄大「壊滅的ボンクラ(笑)!」

(※1)「THE INTERVIEW」

2014年のアメリカ映画で、ジェームズ・フランコは主演・製作を兼任している。朝鮮民主主義人民共和国・金正恩をガッツリ揶揄する内容だったことから、公開直前になって公開を巡って大荒れに!北朝鮮の国の公式ウェブサイトから警告文が出され、更に配給元であるソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが謎の大規模サイバー攻撃受けるわ、上映予定の映画館にも脅迫入るわのてんやわんやの大騒動に!!日本もこれらの嵐に伴い、上映中止……と、まぁそりゃそうか。繊細な距離に居る我々ですからね。当時、この作品公開楽しみにしてたから、私もよく覚えてます(苦笑)

(※2)エド・ウッド(1924~1978没)

映画史上、最低の映画監督としていまだに有名。ほぼ全ての作品に於いて、早い・安い・面白くないが徹底されており、「ゴミの様な映画は数あれど、映画の様なゴミはエド・ウッド作品のみ」という表現までされている。エド・ウッド作品も、監督の没後40年を越えても尚、カルト的人気があると言える。因みに、みんな大好き名匠ティム・バートン監督で1994年に公開された、エド・ウッドを描いた(ジョニー・デップ演)「エド・ウッド」っていう映画もあります。こちらは……めちゃ面白いです(笑)。だって、ティム・バートンだもの!!

世の役者達、映画制作者達は観るべき作品

雄大「これはね、観るべきだと思ったし、ヤッシーに記事(雄大映画塾)にして貰った方が良いと思ったんだよね」

屋敷「私自身観れて本当に良かったです……」

雄大「世の役者たちはね、絶対観たほうがいい……!映画制作者たちみんな観たほうがいいよ!!これを観たら、(映画制作の上で)何をやってはいけないのか分かるでしょ(苦笑)!?」

坂口「そうだね」

雄大「(評価されてる)いい映画ばっかり観てても映画は分かる様にならないよ!いい映画ばっかり観てても仕方ないじゃん!?“おススメ映画教えて下さい~”って俺よく訊かれるけど、“イヤイヤ、駄目な作品も観ようよ~”って思うもんね!最近はね、自分達で映画作ったとしても、機材の技術革新もあるしで……そこまで作品が壊滅的に駄目なことって、ないじゃん?」

坂口「自主映画の方が、画作りしっかりしてる~なんてこと、あるもんね」

屋敷「(PCでの編集が容易になり)みんな編集し慣れてますよね」

雄大「そうそう!だから、そんなに下手な映画にならないんだよ。つまらない映画は沢山あるけど、笑える程つまらない映画ってそうないよね(笑)。やっぱり映画の楽しみってさ、“監督が狙ったもの”っていうのも当然あるけど、この『ザ・ルーム』に関して言えば、監督の狙いとは全く関係ない形で面白さが出て来る、まさしく見本みたいな映画だよね!」

雄大「じゃあ本格的に『ザ・ルーム』に話を絞っていい?」

屋敷「お願いします!!」

雄大「動画サイトにも全編はアップされていなくて、予告を観たことある、程度だったのよ。だから、ちゃんと字幕付きで全編観たかったから、観れて良かったんだけど……また字幕も手が込んでたよね(笑)!?ジョニー(トミー・ウィゾー演)の台詞だけ馬鹿っぽくなってるんだよね(笑)!」

屋敷「全部ひらがなとかなってました(爆笑)!」

雄大「そうそうそう(笑)、馬鹿っぽくなってたでしょ?あれは、いかに彼の芝居が下手かを(英語圏でない)我々にいかに伝えようかっていう、ひとつの手段だよね(笑)」

坂口「そうそう(笑)!普通、字幕付けない笑い芝居にまで、“ハーハーハー”みたいな字幕付いてたね(笑)」

雄大「これ吹き替えとかしちゃうと、面白さ減るやつだよね~(笑)」

雄大「この『ザ・ルーム』は……正直本当に駄目な映画じゃん、言ってしまえば。“本当に駄目な映画”って、みんなで観に来て、結局つまんなかったね……ってなっちゃう映画が多いと思うんだけど、この作品は本当に笑える」

坂口「小出さん(※3)にお金持たせたら、こう(トミー・ウィゾー)なっちゃいそうだけどね~」

雄大「小出さんはよぎるよね~」

坂口「俺も『小出むきだし(※3)』で、小出さんだけ字幕付けてるもん(笑)、日本人だけどね」

雄大「『小出むきだし』は本来この『ザ・ルーム』みたいにすべきだったね。ちゃんと作りすぎなんだよ!」

屋敷「『小出むきだし』は拓さんが監督だったからちゃんとした映画になっちゃた(?)けど、もし小出さんが監督だったら……」

雄大「そうあるべきだったね。そしたら違う売れ方したかもね(笑)」

坂口「そうだね~面白いだろうね(笑)!でもそしたら無駄に恋愛シーンと濡れ場ばっかになりそう(笑)」

(※3)小出さん(小出 志浩・こいでしこう)と映画「小出むきだし」(10)

拓さんのJAC(現JAE)時代の同期であり、規格外の(ぶっ飛んだ)破壊力を持った男・小出さんの実体験を元に、ご本人主演、拓さんが脚本・監修で実写化。ゆうばり映画祭や、自主上映のみに留まった為、ある意味伝説の作品になっている……。小出さんの活舌が神がかってる級に悪く(笑)本当に字幕が無いと、「ん??」ってなってしまう……。屋敷個人はこの作品が大大大好きで、時々拓さんがご自身で開くホームパーティーなどで流して下さるが、好き過ぎて2周連続で観た事もある程(笑)。個人的には、どこかで、もう一度位、特別上映されることを心待ちにしている……。協力として、山口雄大監督、そして園子温監督も名前を並べている。

雄大「俺、B級映画とかZ級って呼ばれるホラー映画とかね、凄い一杯観てるの。で、そういう映画って壊滅的に駄目な映画も沢山在るんだけど……人物の感情が一切繋がってなかったりとか、シーンによって“何でこんな風になってんの?”って理解に苦しむ作品とか、あるんだけど。でもそこには“ホラー映画”だっていう、ある一つのジャンルの囲いがあるよね。だから、描かれてる人間ドラマの部分が仮に駄目でも、例えばクリーチャーが面白かったから、結果良かった!とかあるじゃん。でも、この『ザ・ルーム』で描きたいのは人間ドラマでしょ?なのに人間ドラマで人間の感情が分からない作品って……ここまでシーンごとに全く繋がってないのって、もはや未知の領域まで行っちゃってるんだよね(笑)。何なら俺でも初めて観たよ、人間ドラマでここまで繋がってない作品(笑)!」

屋敷「(爆笑)!」

雄大「なかなか無いよね!?(役者)みんな芝居出来てないからさ~(苦笑)」

坂口「逆にさ、俺達がコメディ映画作る時に使ってる技も使ってるよね?」

雄大「技?絶対、技っていう意識無いと思うよ(笑)!?」

坂口「デニーっていう男の子が、毎度毎度絶妙なタイミングで部屋に入って来るじゃん!」

雄大「デニーはね~……めちゃくちゃ面白いんだよな~」

坂口「あれは俺達が使う技なんだよ(笑)」

屋敷「確かに、意図せずしてギャグとして、完全に成立してましたもんね……」

雄大「なってたなってた(笑)!タイトルが『ザ・ルーム(部屋)』ってなってるだけあって、登場人物がみんな部屋に入ってくるじゃん!何か知らないけど入って来る(笑)」

屋敷「あれはもう完全に吉本新喜劇、みんな入って来る(笑)」

ここで拓さんがポップコーンの固い部分を派手に噛んで、奥歯が一部欠ける(汗)という事案が発生。しかし、口をゆすいだだけでケロリ。さすが撮影中前歯欠けても撮影続ける人だ。(『VERSUS』メイキング観てる人は知ってますよね笑)

雄大「俺ね~早く返って『ディザスター・アーティスト』見直したいもんな~!正直、(このブログ読者の皆様が)『ザ・ルーム』を先に観る手立ては今は無いから(まだソフト発売未定の為。劇場公開されたので、恐らく後に観れる様になります!)、先ずは『ディザスター・アーティスト』を観て貰って、『ザ・ルーム』に興味持って貰えたら……今後の(発売等の)展開を待って貰うしかない(苦笑)」

屋敷「雄大さんも言ってた様に、『ディザスター~』は本当に役者は観るべきだと、私も思いますね」

坂口「元ネタの『ザ・ルーム』観たからハッキリ言えるけど……このトミー・ウィゾーを演じたジェームズ・フランコ……めちゃくちゃ芝居上手いよね……」

雄大「フランコ上手いね!!!!」

個が持つ、「才能」とは。今「やれること」とは。

雄大「役者目線で考えるとさ、あそこまで感情表現が出来ない役者たちでも、普通“このシーンこれで大丈夫かな?”って疑問に思うじゃない。でも撮影はしなきゃいけない。可哀そうだよね、役者は」

屋敷「常識で考えたら、あのレベルの芝居をスクリーンで見せてしまったら……仕事来なくなるけど……」

雄大「でも、ここまでなったらスターだよね(苦笑)」

坂口「結構仕事来たらしいよ(笑)」

雄大「デニーの役もさ、(頭が)オカシイと思うしかないもんね~(苦笑)、人物の位置も変だしさ~……特に屋上のシーンさ~」

坂口「そうだよね~(笑)」

雄大「大体、何で毎度みんな屋上に行くのかもよく分からないし(苦笑)!振り返ったら毎度誰か居たりして、面白過ぎる(笑)」

坂口「あとキャッチボールのシーンね」

屋敷「あ~~~~~~(笑)」

雄大「二本共観て思ったことなんだけどね、お金も自分で集めて、ワンマンで自分が主演・監督で人を集めてさ……自分が一番芝居出来ないっていう事実って、想像するにどれ程の辛さなんだろうって……(苦笑)」

坂口「『ディザスター・~』のオープニングでも描かれてたけど、トミー・ウィゾーって人は、ハートが強い人だったってことは言えるよね」

屋敷「……じゃあ……彼、トミー・ウィゾーが持ってる“才能”って何ですか??」

雄大「表現者としての才能は無いかも知れないね……“一本の映画を作れる才能”とも言おうかと一瞬思ったんだけど、あれだけ俳優部にもスタッフにも好かれなかった(『ディザスター・~』で描かれている)からそれもちょっと違う。それで言うなら“やり通す才能(この一言太字でお願いします)”じゃないかな」

坂口「そうですよね、作品を世に出したことが偉い」

雄大「その才能は凄いと思う。実際、当時これを公開した時には、自分の顔がアップになったポスターをお金掛けて掲げて派手にやったわけでしょ?言い換えれば“周りが見えてない”って大きな強みなんだなって、俺は思うね」

坂口「それがある意味格好いいんだよね」

雄大役者でさ、あんまり芽が出なかったりして、色んな監督たちに”出して下さいよ〜”ってアピールするのも別に否定はしないんだけど、そうしたところで(自分を引き出してくれる)才能のある監督に出逢えるとは限らないわけじゃない。だったら、このトミーみたいに、才能が有るか無いかは分からないけど、この作品が作られた時より格段に、今の時代は映画は作り易くなってるじゃない。だったら自分の才能の有無は一度置いておいて、とにかく何か作品を作って、世に出してみるってのは、凄くアリだと思うんだよね!」

坂口「「クスぶってる位なら、やるべきだね」

雄大悩んでる役者たちに言えることは、行動に移すなら10年後より、”今”の方が動けることが多いと思うんだよ。だから、”今”に悩んでる人たちには、この映画を観て、勇気を出して欲しいんだ

「山口雄大映画塾 feat.坂口拓」を開校する度に思うことがある。

それは、この二人の“映画への敬意”だ。

正直に、自由に、思ったことを話してる様に聞こえるかも知れないけど、彼等はどんな時も映画に対して、絶対的敬意を忘れない。この日も雄大さんは「俺はこの『ザ・ルーム』を悪く言いたくないんだよ、褒めたいの!」と笑顔でしきりに言ってらした。

この『ザ・ルーム』を観に行った時(三月半ば)には、一か月後自分達の国に“緊急事態宣言”が出される事になろうとは、微塵の想像もしていなかった。

映画好きなこのブログ読者の皆様も、私と同じ様に今、映画館に行けず、の空間が恋しくて仕方ない人はきっと多いと思う。私自身も、映画か夢であってくれと願いたくなるこの世界の惨状に、呆然とする瞬間もあるけれど……この不安の暗闇もいつかは終りを迎えます。生活の基盤を支えてくれてる方達、医療従事者の方達を助ける為にも、感謝を表す為にも、居れる人は家に居て、今迄観れなかった映画をどんどん観てみてはどうだろうか?

外には行けないけれど、映画で体験できる新しい事はまだまだあります。

またみんなで笑って泣いて、肩を並べて映画を観れる日は、ほんの近い未来な筈。

みんなで乗り切ろう。

不要不急の外出自粛。こんな時こそ他人に優しく心に笑いが必要ですね。明るいエンタメ皆様に!29日PM8:00 “たくちゃんねる”からサプライズ動画をお届けします。

お楽しみにぃ!! 太田P

“【坂口拓・山口雄大】映画を通して語る”個が持つ「才能」とは?今「やれること」とは?映画塾 最終章!” への1件のコメント

  1. 人参 より:

    マニアックで奥深い話しに矢部さんいきなり登場して笑えました(^-^)

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