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ブログ[後編] “明大前 無言の一晩” 俳優業を一度引退した坂口拓。その時とった下村監督の行動とは!? 映画「RE:BORN」誕生秘話。『坂口拓・下村勇二監督・太田Pに答えて頂きます!屋敷紘子の29の質問』
2012年師走。
確かカレンダーでも年内最後の平日で、街は見渡す限り忘年会を楽しむ人達で、陽気にごった返していた新宿の夜。行き交う人達全員が笑顔。鬱憤も不条理も全てその年に置き去りにしよう!街全体がそんな明るさだった。
私もその夜は、何件かの忘年会をご挨拶がてら梯子し、最後に辿り着いたのが新宿西口のある飲み屋だ。いつも現場やアクション練習で長く時間を共に過ごす仲間達と、忘年会ラストを楽しもうとしていた。
そして集合場所で落ち合った仲間から、「坂口拓さんや下村監督も来てるよ」と耳打ちされる。沢山のアクションマン、映画関係者で溢れた広い座敷席……喧騒の向こうに二人は居た。他にも山口雄大監督達がその席に居た気がするが、私が面識あったのは下村勇二監督と拓さんのみ。当然の如く、ご挨拶に行かねば……と、思ったのだが。
凄く、鮮明に覚えている事がある。拓さんや下村監督の居る席のみが、まるで葬式の様な暗さだったからだ。いつもの笑顔が、そこには一切無かった。
当時、既に下村監督とは時々お仕事をさせて頂けてた状況にあり、坂口拓さんとも面識はあったのだが……見た事のない程暗い表情に躊躇し、挨拶には行けず仕舞い。そしていつの間にか、二人の姿は無くなっていた。
坂口「あれは……所属事務所を辞める話した時だった?」
下村「そうだね」
坂口「新宿だったね。勇ちゃんが“暗くしてても仕方ないんだから、アクションマンの集まりあるからおいでよ”って誘ってくれたんだよ。で、そのアクションマンが一杯参加してる飲み会でも、俺はもの凄く落ち込んでいて、ずっと愚痴か何か言ってたんだよね。そしたら勇二が突然、“表出ろ!!”っていきなり俺の胸ぐら掴んでその場から引き摺り出したんだよ。
俺だっていくら気持ちが沈んでるとは言え、胸ぐら掴まれたらさぁ……流石にカチンと来て、“離せよ!ふざけんなっ!!”って食ってかかろうとした時に、建物の鏡越しに、勇ちゃんが涙ボロボロ流してるのを見て……気付いたんだよね。アクションマン達が沢山居る中で、俺が弱音を吐く姿をみんなに見せたくなかったんだよね、勇二は」
太田「坂口拓は“かぶいてろ“って事か……」
坂口「そうそうそう。“お前はかぶいてなんぼだろ!?”って勇ちゃんが俺に伝えたかったんだって分かって、俺もごめんねって謝って……帰ろっか?って2人で帰ったんだよね」
その新宿の夜を越え、新しい年……2013年を迎えた。坂口と下村は、どんな気持ちで新年を迎えたのだろうか。そこに笑顔はあったのか。
そして、“2013”という数字にも慣れて来た頃に、普段と変わらぬ映画館で私は衝撃的な言葉が入ったフライヤー(ちらし)を目にする事になった。私の人生を変えた映画『VERSUS』メインビジュアルが大きく載ったフライヤー。様子が違う事と言えば、その坂口の背中に真っ赤な文字で「坂口拓 引退興行」と記されていた事だった……。
あの日のショックは今でも忘れられない。それが真実なのか、一体何があったらこんな事になるのか、本人に確かめる事も出来ないまま時間は飛ぶ様に過ぎ、無情にも美しい桜が咲き始め……坂口拓引退興行が始まる4月がやって来た。
理由も分からぬまま、納得出来ぬまま、私も多くのファンや映画仲間と共に幾度と「坂口拓引退興行」に通った一人だ。この引退が嘘でも本当でも、スクリーンで観ないといけない気がしたんだろう。『VERSUS』鑑賞後には、私もこの気持ちをどうして良いか分からず、仕事の連絡をした事しか無かった坂口に、その変わらぬ感動と、それが「引退興行」である事の悔しさをメールした。程無く坂口からこんな返信があった。随分前のやり取りだけど、この言葉は忘れられずに今も覚えている。今でも胸が詰まる。
「そっか、お客さんは喜んでくれてたんだね。良かった。喜んでくれてるなら、それでいいね」
その数日後だったか。遂に『DEATH TRANCE』の上映日を迎えた。言わずもがな、下村勇二がメガホンを取った坂口の主演作品。当日、私はデストラ出演者でもある島津健太郎先輩と一緒に観ようと、劇場前で待ち合わせ。「拓君引退とか、まだ信じられへん……」そう呟く島津さんと隣同士で席に着いた。この日のゲストは勿論監督を務めた下村勇二。
上映前に下村監督による舞台挨拶があり、その後本編上映という流れ……の筈だった。時間になり、スクリーン前のステージに下村監督が登壇。いつも通りのキラキラした笑顔で、坂口の撮影当時のエピソードなどを交えながら、和やかに舞台挨拶が進んで行く。
いよいよこれから上映……すると下村監督が、「最後に見て頂きたい映像があります」と、突然予定されていなかった映像上映を宣言。客電が落とされた。
スクリーンに映し出されたのは、黒いスーツに身を包んだ一人の男の姿。襲い掛かる敵を次々と華麗な蹴り技で倒してゆく。もしかして……?しかし、まだその顔はハッキリ映されない……男は屈さない、止まらない。遂に闘い続けるその男が視線をカメラに向ける。
―――やっぱり……坂口拓だ!!!刹那、スクリーンに大きな文字。
「RE:BORN」
“再誕”、“復活”を意味する強い言葉を、下村は敢えて坂口の引退興行のスクリーンに掲げて見せたのだ!この行為がこの状況に於いてどれほど無謀な事だったのかは、想像に易い。様々な理由があって決まった坂口の引退だったのだろうが、下村は到底納得など出来ていなかったのだろう。これは下村らしい明確な意思を持った狼煙であり、坂口に対して贈る言葉でもあったのだろうと思う。
この特別映像が流れるや否や、客席にざわつきが起こる。当時坂口が所属していた事務所関係者らしき人達が慌ただしく客席を後にしていき……、上映後に下村の姿は劇場に無かった。
自分の引退興行でそんな事が起きているとは、仕事で海外に居た坂口は知る由もなく……。下村が突然取った行動を後に知り、どの様に思ったのだろうか。そして海外から戻った坂口と下村は二人揃って所属事務所に謝罪に行き……、前ブログでも少し触れた、あの“明大前の夜”に続くのだ。
「この業界から消えるかも」
「(去る)その前に一本一緒にやろう」
そんな会話とも呼べないやり取りがあっただけで、その後ずっと無言のまま5時間とも6時間とも知れず、明大前駅前に佇んでいたという二人……。
電車が発着する度、駅前に明かりと喧騒が訪れ、多くの人達が行き交う姿は二人の目にどう映っていたのか。そして街が眠りにつき、暗闇と静寂に支配された言葉無き夜に、何を思ったのか。一夜その手に握りしめていた缶コーヒーの味は、少しでも彼等を慰めてくれたのだろうか―――。
後日、下村がこんな事をぽつり漏らしていた。「無言なんだけど、今迄で一番会話した時間だった気がする」と。お互い言いたい事は胸弾けんばかりに抱えていながら、謝りたい事も怒りたい事も、慰めたい気持ちも上手く口に出来ない。この時の二人には、どんな言葉も口にしたとて役に立たなかったのではなかろうか。二人にだけ流れる時間と、それを見守ってくれる静寂だけが彼等の味方だったのではなかろうか。
他の誰にも聞こえない、この“心の会話”があったからこそ、後に坂口は復活を決意。そして、映画『RE:BORN』が生まれた。
坂口が復活し『RE:BORN』プロジェクトが勢いを増して進んでいる頃。リハーサル終わりの移動中、明大前近くを通り掛かった際に坂口がふと足を止めた。
「前に色々あってさ~……一言も喋らないまま勇ちゃんと何時間も駅前に居た事あんだよね~……」初めてその夜の話をしてくれた。駅の方を向きそう呟く拓さんの背中は、懐かしさと、下村監督への友愛で一杯だった。
坂口「あったね、色んな事」
下村「……そうだね」
太田「いつも罵り合ってるけど、愛だね」
坂口「愛はあるよ」
太田「深いね」
坂口「リスペクトは無いけど愛はある!」
太田「イヤイヤ、しろよ(笑)!!」
屋敷「とか何とか言っちゃって、本当は(リスペクト)あったんですよね?」
坂口・下村「無いっっ!!!」
坂口「屋敷ぃ!お前話聞いてたか!?」
屋敷「あうっ(汗)」
太田「本当に無かったの(苦笑)!?」
坂口「俺はハッキリ言う……無い!!!!」
太田「でも好きだし~」
坂口「好きだし友達だけど、尊敬は無い!」
下村「俺も無かったよ」
太田「マジで!?」
坂口「俺は神に誓って言う。尊敬してなかった」
下村「俺も無いもん。ないないないない!」
太田「もはやネタやないか〜い!」
何なの!?よこの小学生みたいなやり取りは(苦笑)!?さっきまでの感動返せーーーー!!!
坂口拓・下村勇二監督・太田Pに答えて頂きます!屋敷紘子の29の質問』
次回7月23日(火曜)PM7:30!!
“[後編] “明大前 無言の一晩” 俳優業を一度引退した坂口拓。その時とった下村監督の行動とは!? 映画「RE:BORN」誕生秘話。『坂口拓・下村勇二監督・太田Pに答えて頂きます!屋敷紘子の29の質問』” への4件のフィードバック
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拓さんの胸ぐら掴んで、彼の感情は本気の仲間だからこその勢い。
『辞めるのは 簡単なことです』
口先だけで、引退しないで下さいよー♪
また…
涙無しでは読めませんでした。
知ってます、この映像。
キングダムの左慈役の坂口拓さんから
本当に色々調べて辿り着いたのです。
私の心が、左慈役の拓さんしか知らなぃのが悔しかったのでしょうねw
『この人本物だ!』と何か分からなぃ衝撃を受けてしまぃ…(笑)
『狂武蔵』のインタビュー記事で
本気の漢達を魅せられてやられ、
確かRE:BORNのこの映像でも本気の漢の覚悟にやられ…
『本当にこの人はいつか引退してしまぅのだろぅか…もったぃなぃ』と。
下村監督の本気のお陰で拓さんは
『もぅ一度…』と覚悟を決めてくれて
今、私達ファンは色々な拓さんや周りの色んな人達を知り楽しませて頂けてます。本当にありがとぅござぃます。
またひとつもふたつも大切な思い出を知る事が出来て本当に嬉しぃです☆
こんなに本気で愛に溢れてる人達に出会えた縁に感謝♪♪
ありがとぅござぃます!!
だから 出会えた
感謝です。
いろいろ書いてはみたのですが
上手く伝えられないのが歯痒く
この一言のみとしました。
だから 貴方に出会えたんですね
読み終わって、久々に夜の新宿に佇んで物思いに耽りたい、そんな気分になりました。
文書も、写真も、動画も、
今回のブログは、特に胸にくる。