【坂口拓・山口雄大】 『1917 命をかけた伝令』を鑑賞後『狂武蔵』正真正銘の”ワンシーンワンカット”の凄さを語る!!

雄大「この『1917』公開に際してさ、“ワンカット”って言葉押しで宣伝してるのって、日本だけなんだよね。で、実際観てみたらワンカットというか……」

全員「ツーカット(笑)!!!!」

雄大「一回時間経過あるじゃん(苦笑)あんな風に(宣伝でワンカットだと)言っちゃうとちょっとあれだよね(苦笑)」

実は、この『1917』は日本ではずっと“驚異のワンカット映画”的宣伝をされていた為、疑似ワンカットとは勿論分かっていても、この宣伝の仕方は少々ミスリード感が否めないところがあったかも。これの映画はワンカットで描かれていなくとも、ツーカットでもスリーカットでも、凄い映画には違い無い。この読者の皆様で、宣伝文句“ワンカット”を意識して観てらした方は、一体どう感じられたのだろう。

屋敷「ワンカットって言葉で勧誘されて行ったお客さんは、映画は素晴らしいのにワンカットではない事に騙された感抱いて変にがっかりする人も居るんじゃないですかね……」

雄大「割ってるし、途中で(主人公が)気絶して時間経過あるじゃない」

坂口「あそこでしっかりツーカットだからね(苦笑)俺、アレ!!??って思ったもん」

雄大「実際はツーカットではあるけど(苦笑)、ストーリーが太陽出てる時間に始まって彼等が目的地に向かう、で、時間経過あってツーカット目は夜になってる訳だけど……ナイトシーンのあの照明は凄いんだけどあの動く照明ね!!」

坂口・屋敷「……凄かった!!」

雄大「あれ……どうやってんの!?どんなデカい照明たいてるの(苦笑)!?って感じなんだけど、俺あんな表現ある戦争映画観た事無いよ!」

坂口「あれは凄かったわ!!!」

雄大「真っ暗闇の中、砲火で目の前にあんな光景広がったら、生と死の間に居る事も忘れて見とれちゃうよね……。だから、昼間始まって、あの夜を生き抜いて、朝を迎えるって事を考えるとやはり(ツーカットにしての)時間経過は物語に必要なんだよね」

ここで、山口雄大監督が個人的に好きな“ワンカット(疑似も勿論含む)”シーンを含む映画を教えて頂いた。

雄大「“ワンカット”って最近流行りではあるけど、今回の『1917』程ワンカットに拘ってる作品は、なかなか見付からないよね。手持ちで荒っぽく撮ってる作品は何本もあるけどね」

屋敷「雄大さんが個人的に好きなワンカット描写が含まれる映画って何ですか?」

雄大「やっぱりヒッチコックの『ロープ』(48)は大好きだし(※1)、『バードマン』(15)も好きだな。それと頭からへばりついて離れないのは『トゥモロー・ワールド』(06)!」

坂口「あの出産シーンは凄かった!!」

雄大「あれは凄かったね~!!!やっぱりワンカットで見せる醍醐味って、観客に“まるでその場に居る様に体験させたい”っていうのが大きいと思うよ。でね、これは別にワンカット映画って訳ではないんだけど、俺この前『サタンタンゴ』(94)っていう映画を観たの。7時間18の(苦笑)。7時間18分を150カットで作られてる映画なんだよね、2回の休憩を挟んで(苦笑)。俺も流石に7時間以上の映画観るのは初めてだったんだけど(苦笑)単純計算しても、ワンカット当たり3分以上なんだよね。兎に角ず~っと長回しなわけ。そうなるとね、観客は“ストーリーを追う”とかではなくてね、とにかく“見続ける”っていう体験になっていく。別に大事件が起きる訳でも無いの。大体この世に、映画としてどうしても7時間半近く掛けないと伝わらないものなんて、基本無いじゃん(苦笑)。『サタンタンゴ』ではハンガリーの経済的に豊かでない、一般の人々の生活を永遠見せら例えば、普通映画では飛ばされてしまうような、生活の機微迄描かれてるんだよね。朝起きて服を着替えるとか、デブのおじさんがはぁはぁ言いながら帰宅して、一旦椅子に座って息を整えてから……また動き出す、とか(笑)。そういうのを永遠見せられるわけ(笑)!」

全員「(笑)!」

雄大「それってね“見る”って行為が一体何なのか、とても考えさせられたんだよね。7時間半そんな情景を見せられ続けたら、そのハンガリーの町のことなんて何も知らないけど、“体験してる”感じになるんだよ、正に旅行と一緒!普通の映画の残り方とは、全く違う残り方をするんだよね。映画は物語を作って見せるだけのものでは無い、っていうことを実際にやってのけてしまってるんだよね。いわゆる映画って、約2時間の中で物語を完結させないといけない条件で作られてる作品が多いから、次から次に何か起きるじゃん。それとは全く違うものなんだよ。だからって、また直ぐ観たいかって訊かれたら、二度と観たくない!!って思ったけど(笑)、あんな“映画体験”は他には無いよ。『サタンタンゴ』での体験を踏まえた上で、今回の『1917』の話に戻るとね、やはりエンターテイメントだなって思った!最後にちゃんと一番大きな見せ場も用意されてるしね。起きる事がどんどん大きく、どんどん逼迫した状況になって行くじゃん。ちゃんとエンターテイメントなんだよ、主人公が常軌を逸した決断をする瞬間には、こっち(観客)も盛り上がるじゃん!」

坂口「そうだね~!!」

雄大「結局、『1917』めっちゃ面白い映画って話になるんだけど(笑)」

坂口「そうだね(笑)」

(※1)全編ワンカット映画!!と言えば、真っ先に紹介せねばならないのが、アルフレッド・ヒッチコック監督『ロープ』(1948)である。当時は勿論デジタルではなくフィルムでの撮影であった為に、フィルムひと巻約10分をまるまるノーカット(切れ目無し)で撮影し、絶妙なタイミングでカメラ前を通過する人物や、家具等で画面を暗くする事でフィルムチェンジをしても画が繋がる様に作られた。

(※2)『サタンタンゴ』(94)

2011年『ニーチェの馬』を最後に映画監督からの引退を発表したハンガリーを代表する映画監督タル・ベーラが1994年に発表した、7時間18分におよぶ、超超超長編大作。日本では映画祭でのみの上映に止まっていたが、19年10月に「4K デジタル・レストア版」が劇場で初公開された。劇場が気にする、回転数(一日に何回上映出来るか)に関して、考える余地を与えないこの長尺!!さすがタル・ベーラ監督!!

『1917』から『狂武蔵』を再考する

雄大「今、これだけ映像技術が進化しててさ、ワンカットに見せるワンカット映画も作れる時代にさ……なんでこの人(坂口を指さし)ガチで77分全部本当にやってんの!?っていうね(笑)!『狂武蔵』に関しては、疑似ワンカットでは無いって、見れば誰でも分かるよね?だって、カット割れる箇所が無いんだもん。あの凄味は、見れば観客に伝わると思うよ!」

屋敷「確かに疑似だと思われたら、嫌だな……」

雄大「あれは思う余地ないから大丈夫だよ」

屋敷「まぁ拓さんだってどう見ても本当にボロボロに疲れていってますもんね(苦笑)」

坂口「あれ俺が芝居でやってたら……アカデミー賞もんだわ(笑)!」

雄大「今だから言うけど、監督した『極道兵器』(11)も中盤に4分半のワンカットアクションシーンが有るんだけど……あれは途中で割ってます!」

坂口「ちゃんと撮影はワンカットでやったんだよ!でも、俺が途中で首痛めちゃったりして文句なしベストっていうのが撮れなかったんだよ」

雄大「で、4分半ワンカットを連続二回撮影して」

坂口「結果、良いとこを繋いで編集したんだよね」

雄大「今さ、この『1917』然り、ワンカットで撮る映画の凄さってお客さんにも伝わってると思うんだよね。日本でも『カメラを止めるな』とか、ワンカットが話題に挙がる作品が身近にあったりしたしね。絶対的にワンカットの凄さ、面白さが伝わってるこのタイミングでの『狂武蔵』公開は良いと思うんだよね!ちょっと前だったら、これは伝わらなかったかも知れない」

太田「公開に7年という時間が掛かった、その意味があったってことですよね」

坂口「そうだね」

『ロープ』『トゥモロー・ワールド』『バードマン』『ゼロ・グラビティ』『極道兵器』『悪女』『カメラを止めるな』等々、観た作品を少し思い出すだけでも、そしてこの日話題に挙がったタイトルだけを考えても、“ワンシーン・ワンカット”という、映画人達の昔からの憧れをモロに具現化したこの技法(もしくは執念とも呼べるかも……)は、撮影技法の技術革新と共に私達に更なる興奮と、映画に没入させた上、最上の「映画体験」をもたらすに至っている。

「ワンシーン・ワンカットって面白いじゃん!!」この言葉が沁み込みつつある今、次に投下される作品そこが、坂口拓 主演 ・下村勇二共同監督『狂武蔵』だ。この時代を静かに待っていた様に目覚めた作品を楽しむためにも、何故彼等が、“ワンシーン・ワンカット”に命を懸けたのか、そこにどんな映画体験があるのかを探求する為にも、これらの映画を観てみるってどうだろう?そうすれば、『狂武蔵』が公開され、スクリーンで正真正銘の“ワンシーン・ワンカット”を目撃した時、更に違う深さで楽しめるかも知れない。

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