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ブログ『狂武蔵』効果音にこだわった音の世界とは!?音響効果技師”柴崎憲治”ロングインタビュー【後編】
Q.いまから音を着ける、と決まった作品を観た時に柴崎さんの中で音が鳴るのでしょうか?それとも探っていく作業なのでしょうか?
柴崎「探っていく感じでは無くて、最初にラッシュ観た時にさ、“今回はこんな音にしよう”っていうのが大体イメージで出てきて、今回(狂武蔵)だったら、要するに“刀(の音)も日本刀と香港映画の半分ぐらいでやってみよう”ってのが有ったね。斬る時に刀のシュッ!って擦れる鋭い音を入れたりして、その“冷たさ”や“怖さ”を感じさせる音になってるんだよ。日本刀らしい様な、日本刀らしくない様な音を結構着けたりなんかしてるんだよね。当たる何かも低い音を入れてるんですよ、斬る音なんかも低い音を当ててるんですよね、全部別で作って。
刀の音も何種類かの音を重ねてあるし、斬る音も多いものだと5~6種類の音を重ねて作ってます。その様々な(音の)材料を出したり引いたりして音が決まるまで作っていくんです。全部が同じ様に聴こえたくないっていうのが自分の中にあるんだよね、実はね!」
Q.少し前までは映画館自体の音響にバラツキがあったし、そこまで良質な音で観れる機会も少なかったと思いますが、昨今の環境良い劇場でもう一度自分が音を手掛けた作品をかけれるなら、何が観たいですか?
柴崎「アクションで言うなら、『デス・トランス』もそうだけど、『VERSUS』小屋(映画館)でかけて欲しいよね!」
下村・屋敷「おお~~~~~~~~(嬉)!!」
柴崎「と、俺は思う!だってあんな奇抜なアクション初めてだったのよ、俺(笑)!それまではアクションって言っても、東映のヤクザものだったりね!でもあんなアクションは観たこと無かった!」
屋敷「実は私『VERSUS』がきっかけでアクションにのめり込んで人生狂ったんです~(笑)」
柴崎「そうなの(笑)!?……でも良い風に狂ったんでしょ(笑)?」
Q.このブログをきっかけに、映画への見方が変わったり、更には紹介する映画が気になって観て下さる読者さんも多くいらっしゃいます。そこで質問なのですが「音響効果技師がすすめる、この映画は音に注目(聞?)して観るべし!!!!」みたいな映画があれば教えて下さい。
柴崎「……『スペクター』と……」
屋敷「!!『007 スペクター』ですか!?」
柴崎「そう!007の『スカイフォール』と『スペクター』この二本は傑作よ!!!」
下村「もう一度改めて観なきゃ……」
柴崎「見事ですよ。特に『スカイフォール』は巧い。やっぱりね、自然な音がしてるのよ。ひとつの音が爆発しようが銃の音が響こうが、“音の空気感”が物凄く良く出来てるのよ。取って付けた様な音してないのよ!“そこで鳴ってるよ、これ!”って音してるのよ」
下村・屋敷「今すぐ改めて観たい!」
柴崎「俺は最近のアメリカ映画なんかは(音の)ミックスがあんまり好きじゃないんだけどさ。『ジョン・ウィック』なんか観てると“おいおい、やり過ぎだよ~!”って言いたくなっちゃう(笑)!本当は好きなんだよ、ああいう単純なストーリーの作品、大好きなんだよ(笑)!こんな事言っておきながらも、『狂武蔵』の作業終わったら最新作の『ジョン・ウィック パラベラム』観に行こうと思ってる位だから(笑)。基本アクション映画は好きなんですよ。どんな下らない映画だろうが、海外の映画って面白い事やってる時がある。そんな作品を目の当たりにすると、やっぱり刺激は受けますよね。『狂武蔵』でも『ジョン・ウィック』ばりの(音の)使い方する所もあるよ。低い音を使ってね。トップシーンなんて正にその世界だから」
Q.下村さん、何かありますか?(急に質問雑でごめんなさい!)
下村「……いや、もう……感謝の言葉しか無いんですけど(苦笑)」
柴崎「(笑)!」
下村「じゃあ、僕からの質問なんですけど、『狂武蔵』は他の作品の平均数と比べて効果音が入る箇所って多いですか?」
柴崎「(喰い気味に)多いです(笑)!!かなり多いです!!」
下村「どれくらい多いんでしょう?」
柴崎「斬る音だけでも、800以上のマーカー(音を入れる箇所)打ってますからね~。叩いて、斬ってっていう作業が加わるでしょ?そうするとかなりの数ですよ。その他に刀の音がある。そうすると通常のマーカーでは収まり切らない位の数になる。音だけでも……何千発の世界ですよ(苦笑)」
下村・屋敷「………」
屋敷「くっ……『狂武蔵』が斬る音でマーカー数800だとして、他の作品って具体的な数字だとどんなもんなんですか……(汗)?」
柴崎「こんなに多くない(苦笑)!アクション多くたって全ての音の数で800とか。でもこの作品は斬る音だけで平気で800越えだから(笑)!」
下村・屋敷「爆笑!」
柴崎「これに刀の音とか他にも色々有る訳だから、別班組んでやってるんです」
屋敷「ひゃ~~!!!」
柴崎「フォーリーやって、足音関係やって、斬りとかバックグラウンド、刀の音ってなると、事実上3班位の体制でやってます。……そうでもしないと終わらない、この作品(苦笑)!音も全部自分でやると方向性がひとつになっちゃうんですよ。
うちの会社にはもう一人松浦っていうのがいて、いつもはそいつが俺の刀の音を全部コピーして着けてるんですよ」
屋敷「ひとりで創らない良さ、があるんですね」
柴崎「ありますね!やっぱり違う見方がありますから。考え方も違うし。だからそこを利用しながら、ちょっと俺の方で色を着けていく。ただ、今回に関して“斬る音”だけはちゃんと俺がやんないと、方向性が違っちゃうんで、怖いんですよ」
屋敷「キャラすら変わって見える可能性があるんですね」
柴崎「変わります変わります!殴る時の、殴って当たる骨の音なんかを全部足していく訳ですよ。頭ならガツン!っていう低い音や骨の音を足していってるわけ。最終的に監督がオーダーした音が出来ないとまずいわけですよ。だからそこは俺が全部やる。やっぱり下村監督のやりたい事をやりたいわけ。その中で‥‥‥こっそり俺のやりたい事もやる(笑)!」
下村「(笑)!」
Q.最後の質問です。
お客様には『狂武蔵』のどんな音・どんなところに注目して欲しいでしょう?
柴崎「もう音なんてどうでも良いから(笑)、とにかく頭から前のめりでこの作品観て欲しいね!!!!」
このインタビュー後もまだまだ作業は続き‥‥‥
夜21時を過ぎた頃に遂に全員揃って全編通して『狂武蔵』を内臓から堪能。これについて書くとネタバレ甚だしいので、我慢します!!言えるのは、遂に『狂武蔵』は長い暗闇から抜け出し、スクリーンが見える所まで進んで来たということ。
そして帰りの車中。
(太田P車。下村監督助手席、後部座席に藤田Pと屋敷)
取り敢えず、過去に同類の映画に出逢った事のない私達はとりとめのない会話を繰り返す(苦笑)。
下村「……アクション映画って括りじゃないよね……」
太田「いや~何だろうね、あれは……(感慨深げ)」
下村「やっしー、『狂武蔵』に一言キャッチフレーズ付けるなら何?」
屋敷「いやいや、ライターやってるからって無茶です(汗)ひと月下さい(笑)」
下村「真一さん……寝てる?」
藤田「寝てないわ(笑)!」
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読み終えて「すごいな、スゴい、凄い」の印象。刀の音も切る音も、音を幾つも重ねたものなんですね。
今まで1つの音だと思ってました。すいません。
でもここで知れて良かったですし、ますます狂武蔵が楽しみです。
より良く音を聞く環境も用意した方が良い気がしますが、自宅だと貧弱な環境しかない。。くぅ〜。
でも今後映画を見る時には音にも意識して見るようにします。
記事、ありがとうございました。
まずはスカイフォールを見ようっと。
刀の音…
そんなに重ねてたんですね…
刀事態、人を切った事はないのでわかりませんが肉を断つ音、骨まであたる音っていろいろあると思うのに映像見ただけでイメージ出来るなんてやっぱり一流の先生は違うのですね✨
映画館だと自分が切られてる感覚にも陥るのでしょうね?
本当に楽しみです
強弱や大小、硬さや重さに止まらず、「冷たい」や「怖い」などの無数の基準や奥行きある表現方法が音づくりの世界にはあるのだと。
その時点でもうたまらなく面白いわけで。名匠ならではの「音感」に、のっけから興味をそそられまくりです。
さらにその評価軸が「音の自然さ」にあるなど、どのお話もいちいち貴重でとにかく新鮮。
これを読んでしまったら、どうしたって音に注目?注耳?してしまいますよね笑
「狂武蔵」が100倍楽しめそうです。
国宝級の”耳より”インタビュー、ありがとうございました!!
『スカイフォール』、『スペクター』、再見しなければ。