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ブログ『柴崎憲治』 音響効果技師 ロングインタビュー!日本映画、香港映画”音のオーダーの違い”とは!?坂口拓主演『狂武蔵』ドニー・イェン主演『SPL 狼よ静かに死ね』音の思考能力の違い。前編
「あなたが世界を鳴らすのよ」
最近観た映画の中に、そんな素敵な台詞があった。じゃあ“映画”そのものの世界を鳴らすのは誰なのか。それが「音響効果技師」と呼ばれる方たちである。
今、完成に向けての大詰め作業に入っている『狂武蔵』であるが、今作も『RE:BORN』に引き続き音響効果は柴崎憲治さんが担当して下さる事になった。「ヤッシー!今回も柴崎さんがやって下さる事になったんだよ!!!」正式に決まった時の下村監督の嬉しそうな様子は忘れられない。
映画が好きな方、もしくは興味がある方は是非『柴崎憲治』さんを検索して、手掛けられた作品履歴を見て欲しい。必ずと言って良い程、私達は柴崎さんが創った音で映画を堪能している筈である。
10月22日、23日。
角川大映スタジオのダビングルームで、柴崎憲治さん含め音響効果チームと、下村監督、藤田P、太田Pによる『狂武蔵』に於ける「音」の最終作業が行われ、役者は滅多に入れない(まぁほぼ入る事ない!)音の聖域に私もお邪魔し、この世に生み落とされる直前の作品に出逢って来たのだが……音の魔法、マジやばい(語彙力喪失)。これは……楽しみにして頂きたい。言葉で書くのも勿体無い、スクリーンで体験出来るその日をもう少し待ってて下さいとしか言えないのが申し訳ないのですが……。待ってて下さい!!!!!!
昼食休憩を挟み、午後作業開始直前。
……柴崎憲治さんにインタビューさせて頂ける事に!!屋敷がインタビュアーで、贅沢にも下村監督も同席、太田Pがその様子を撮影(最近太田Pは裏側を撮る為だけにiPhone11を購入したそうです~!)。本当はロビーか何処かで……と思ったのに、柴崎さん自ら「ここで全然構わないよ!!」と、何とその作業場でそのままインタビューが始まった(ひゃ~光栄!!)。
Q: このブログは映画ファン、特にアクション映画が好きな方達が多く読んで下さってるブログなのですが、先ずは「音響効果技師」とは一体どんなお仕事をされるのか、読者の方達に教えて頂けますか?
柴崎「台詞と音楽以外の“音”、要するに人が歩く足音だったり、この映画だったら刀で斬る音、殴る音、カーアクションだったら車の音、タイヤのスリップする音だったり、銃の音だったりを付けるのが僕の仕事ですね」
Q: この、音響効果技師になられたきっかけは何だったのでしょう?
柴崎「あの……ぶっちゃけた話すると、元々さほど興味も無く(苦笑)。最初は一年間位アルバイト見たいな感じで日活撮影所に入って、セット掃除なんかやってる時に“ちょっとやってみる??”って言われたのがきっかけですよ(笑)!」
屋敷「え(笑)!?そんなきっかけだったんですか?」
柴崎「そうだよ~(笑)!」
Q: では、音響効果の“面白さ”に気付いたのはどんなタイミングだったのでしょうか?
柴崎「声掛けられて、初めて劇場映画の助手に就いてみて、初めて雨とか風とかっていう効果音の存在を知って、“こんな世界があるんだ!”って。それまでよく知らなかったんですよ,実はね」
屋敷「映画はよくご覧になっていても、そこまではって感じだったんですね」
柴崎「映画もね、007(ダブルオーセブン)と西部劇以外はそんなに観た事なかったんですよ(苦笑)正直な話。この商売に入ってから、映画の知識がなさ過ぎるなって。二ヶ月三か月仕事でやっていく内に気付いたんですよね。それで仕事の合間にフィルムセンターなんかに通って古い映画から見始めて。仕事の合間を縫って、年間150本位は観ていたかな?そういう事はやってきましたね。当時だったらフェリーニとかパゾリーニとかのイタリアのアートな作品からアクション映画まで観てましたね。007とか(笑)」
屋敷「そこはブレないんですね(笑)」
Q: 柴崎さんは劇場映画でもドラマからアクション映画まで、様々な作品を手掛けていらっしゃいますが、柴崎さんの考える“アクション映画”に於ける音とはどういったものでしょうか?
柴崎「これね、007とか観てれば分かるんだけど……日本のアクション映画って凄く“音が貧しい”んだよな。諸先輩には失礼なんだけど。映画って“娯楽”だから、画(え)だけで無くて音もお客さんを楽しませるものを創りたいと思ってますね」
Q: 実は柴崎さんは坂口拓さんのキーになる作品(『VERSUS』『デス・トランス』『RE:BORN』などなどなど!!)を多く手掛けていらっしゃいます。柴崎さんから見る坂口拓とはどんな俳優のイメージでしたか?
柴崎「『VERSUS』の時なんかは、“何だろうこの人?これだけ身体動くのも凄いな!”って感じて、音もそれなりの音を付けようっていうのはあったよね。エネルギッシュな動きをしてるからね。(動きが凄くて)役者なのか役者じゃないのか俺には分からなかった程、実は」
下村「(笑)」
柴崎「当時は(坂口を)“野性味”のある人だなって感じたね」
Q: 今作『狂武蔵』を初見でどの様に感じましたか?
柴崎「本当にワンカットでずっと追ってるし、刀の使い方も独特だなってものあるし。踊る様に人を斬る時代劇とは違うから。舞う様に人を斬る作品とか作風もあるでしょ?そういう様式美でもって人を斬る作品とはまるで違う。この作品は本当に殺す為に“殴る”とか“突く”とか。斬り方も殺す為の斬り方なんですよ。これは下村監督とも話をしたんだけれど、普通に斬る音では無くて、一回ガツンと(相手の身体に刀を)入れて、ぎゅっと引き斬るとか、殴る様な音、骨が砕ける様な音、そういう音を中心にしてやろうって話をしたわけだよね」
下村「僕、音は絶対柴崎さんにお願いしたいなっていうのがずっとあって……柴崎さんの創る音は“音の厚み”が違うんですよ。柴崎さんはドニー・イェン主演の『SPL 狼よ静かに死ね』(06/ウィルソン・イップ監督)の音響効果もされてますけど、それ以前のドニーの作品観ても分かりますが、香港アクション映画って基本的に効果音が薄いんですよね。ひとつのパンチを打つ動きに対して、ひとつの音、みたいな。だけど柴崎さんの音は拳が空を切る音、相手の身体に当たってめり込む音、そして拳が振り抜かれる音と重なっていく結果、音に凄く厚みがあるから痛々しかったり。画の重みにさらに音でも重みが付くから、観客に更に痛みが伝わる。その音で伝わる感覚が本当に感動的で……だから僕が映画を創る時は、音は柴崎さんにお願いしよう!っていうのがあるんですよ。ただね、ただね(苦笑)この(予算)規模の映画だと、本来柴崎さんにはお願いし辛いところもあるんですけど、こちらとしても頑張ってでも柴崎さんにお願いしたいのが、本音です(笑)」
柴崎「こちらも毎度、下村監督がどんな作品を持って来るのか興味がある(笑)。“今回これ下村ちゃんどうやってやるのかな~?”ってね。だから面白いからやる(笑)」
Q: 『SPL』のお話が出ましたが、香港映画の音響効果を担当された際、日本映画とは違う音のオーダーなどはあったのでしょうか?(ちなみに屋敷はドニー作品の中で一番好きなのは『SPL』であり、その中でも一番好きなシーンは終盤差し掛かる頃の、ドニー対ウー・ジンのあの細い路地でのアクション!台詞など一言も無く、そこには二人の男による痺れる戦いと、音楽と音しか存在しない……最高なんよ)
柴崎「オーダーの違いはありましたね~。SPLのウィルソン・イップ監督は“人が落ちる時はドーーーーン!!って派手に落ちてくれ”とか、それこそ“斬られたら豚の悲鳴みたいにぎゃ~!!って音を付けてくれ”とか、色んな事を言うわけ。日本とはちょっと違うんですよね、“音の考え方”や“音の思考能力”がね。ひとつひとつを派手にしてくれ、とか、重みを付けてくれっていうオーダーは有りましたね。逆にバックグラウンド(の音)はそんなに欲しがらなくて、アクション(動き)に対する音が中心になってくるんだよね。後ろの環境音なんかは静か目に抑えて、台詞と動きの音を大きくっていう表現になってくる。日本映画の様に、川とか風とか、そういった環境音を上手く使う事にはあまり興味が無いみたいだね」
Q: 『SPL』参加はどの様な経緯で実現したのでしょう?
柴崎「これはね、ドニー・イェンが(僕と仕事を)やりたいって事で、話が来たんだよ」
下村「『修羅雪姫』(佐藤信介監督/ドニー・イェンアクション監督)』の時に、音響効果を柴崎さん、音楽を川井憲二さんがされてて、後にドニーは音楽も川井さんにお願いしてるんだけど、柴崎さんの音もドニーが気に入って『SPL』のウィルソン・イップ監督に推薦したんだと思う」
柴崎「刀の音が良いって(ドニー)が言ってたって、谷垣健治君から聞いてはいたんだけど。『SPL』の時にナイフでの格闘があるんですよ。これがまた……動きが本当に速くて、見えないんだよ俺(笑)!!」
下村「路地裏のところですね(嬉々)」
屋敷「だってあのシーン最高ですもん~~~♡」
下村「あれもし音が弱かったら…ねぇ…」
屋敷「ヤッチュー(※最後に下村解説有り)がヤッチューに全く見えないシーンってなかなか無いですよね!」
下村「そう!(立ち回りの)手を付けてないカットとかあるんですよね」
柴崎「そうそうそう!!」
下村「あの音の付け方って本当に柴崎さんの素晴らしいセンスというか……本当に難しいと思うんですよね」
柴崎「あのシーンはただナイフがヒュっと空を切る音にするんではなくて、金属の“唸り”を入れたりしてるんですよ。当たってる様にも聞こえるし、当たってない様にも聞こえる。ナイフとナイフが擦れてる様にも聞こえる。今回『狂武蔵』にもそういう音は結構使ってるんですよ。“斬る”という流れの中でね」
(※)下村解説
一招八式 ❮ヤッチューパッセ❯
一つの動作で八つ(多くの)動作を引き出す。アクションでは、手を決めずに手を多く動かして、相手と戦ってるように見せる技術。望遠時にカメラ手前でにシャッターしたりして戦ってる雰囲気を表現する事もある。
参考にドニーイエンの『ドラゴン危機一髪97』を観るとよくわかります。
皆様……いきなりですけど、勿体無いので柴崎憲治さんのインタビューは前半・後半の二部にします!!今、こうして録音したインタビュー音声聴きながら文字起こしをしていても、柴崎さんが「音」を「言葉」に置き換えるその言葉が本当に素敵過ぎて……。音の思考能力、金属の唸り……その声と言葉が生む音さえもが映画的。
柴崎さんのお話を聞いているそばから、私は映画が恋しくなった。一本の映画の向こう側に、こんな世界があるなんて。耳に瞬間響くその音の向こうに、こんなにも音の職人達の心とプライドが詰まっているなんて。
きっと読者の皆様と同じ様に、私も大きな感銘を受けている。この続きはまた次週のブログで。お楽しみにです!!!『SPL 狼よ静かに死ね』を未見の方で興味が少しでも湧いたら、是非観て欲しいです。『修羅雪姫』も是非……マニアには有名な話ですが、主演・釈由美子さんのボディダブルをやっているのが、下村勇二監督です!書いちゃった(笑)!
“『柴崎憲治』 音響効果技師 ロングインタビュー!日本映画、香港映画”音のオーダーの違い”とは!?坂口拓主演『狂武蔵』ドニー・イェン主演『SPL 狼よ静かに死ね』音の思考能力の違い。前編” への3件のフィードバック
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担当作品を観てビックリ。そして納得。
下村監督が修羅雪姫での釈由美子さんの。。だったんですね。
修羅雪姫は好きな映画です。
「SPL 狼よ静かに死ね」を観てみたくなりました。
柴崎憲治さんの担当作品の多さにも驚き。
そして狂武蔵の公開が楽しみです。
当然効果音のアクセントも含めて、幅広いアクション映画を楽しんできたつもり……
でしたが、こんな記事を読んでしまうと、とにかく全部もう一度見直してみたくなりますね。
どんなにこだわって凄い音を作っても、映像と違和感が生まれては意味がないわけで。
やはり動きや場の空気を”見る”ことができる人じゃないと、最も自然でありながら胸を打つような音は生み出せないんだなと痛感しました。
「狂武蔵」の完成まで、「SPL」をはじめしっかり復習しながら”耳鳴らし”しておきたいと思います。
後半も楽しみ!